2016年02月

2016年02月14日

「海士」御礼

九皐会「海士」終わりました。

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この日は、2月中旬にも関わらず、最高気温は23度と記録的な気温を計測しました。
もう、温かいというよりは、暑いというレベルです。


「海士」は、第二回の自主公演「能まつり」で演じた能です。

初めて宝生能楽堂にて行った時でした。

詳細は、下記の日記をご覧ください。
http://shitashimu.dreamlog.jp/archives/2011-05-27.html

やはり、2度目だと余裕があります。

なんというか・・・
身体の中に入っているような感覚です。

5年前に、相当の気持ちで「海士」に取り組みました。
そうやって身体にしみこませた能のムーブメントは、保存されたままなのですね。

初演の時は、いろんな処で苦労した覚えがあります。
それに比べると、ずいぶん楽な気持で演じられました

今回は二度目なので「クツロギ」という小書(特殊演出)で演じました。

「クツロギ」になると色々変わります。

まず、前シテの装束が違います。
常の演出ですと、水衣という上着を羽織るのですが、小書だと着ません。

モギドウという着方ですが、上着を着ないことによって、如何にも海に潜る海女のイメージになります。
確かに、海に入るときに上着は着ませんねえ。

そして、最初に海藻をとっていることを現すために鎌を持って現れるのですが、その鎌で前場の見せ場の「玉之段」を舞います。

「玉之段」で、海士の女は剣を抜き身で持って海に飛び込みます。そして取り戻した宝の玉を追手から隠すために、「乳の下」即ち乳房の下を剣で切って、その中に宝の玉を隠して逃げます。

「玉之段」のこの名場面、通常の型だと扇で表現しますが、小書の型だと、鎌でもって腹を横一文字に切ります。
かなりリアルな表現です。

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これがそのシーンです。
写真だと分かりにくいですが、手にしているのが鎌で、まさにお腹をかっさばく瞬間です。


前場は、謡が質・量ともにボリュームがあり、初演の時は酸欠になりました。
今回はそんな事態にはなりませんでした。

今回も当然に全力で謡ったので、しんどかったです。
でも、酸欠になるようなことはありませんでした。


私は最近、女性の役の時の声の出し方を変えています。
これはまだ研究中です。
決して女性の役柄だから、力を抜いたり弱く謡う訳ではありません。

感覚的なことなので説明しづらいのですが、やさしく響くように謡っているとでも言いましょうか。

その成果が、どうだったのか気になります。

謡に完成形というものはなく、役者は常に進化することを目指して精進しなければならないと思っています。

今回、酸欠することなく余裕をもって謡えたことは、一つの進歩といってよいと思います。
ただそれが、声の出し方を変えたことと関係しているかは、今後の研究によるかなあと思っています。

この能では、子方に扇と経巻と、2回手渡す場面があります。
能面を着けて限られた視界の中で、物を手渡すというのは、案外難しいものです。

今回は、自分の子供との共演だったので、その辺は何度も打ち合わせたのでスムーズにいきました。

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後場は、これはもう「早舞」に尽きます。
「クツロギ」の小書が付くと、この舞がガラッと変わります。

袖を翻す型が増え、いたるところでクルクル回転して、緩急が付いて橋掛かりも使ったダイナミックな舞となります。

この舞を舞いたいから「海士 クツロギ」を演じているといっても過言ではありません。

お囃子のノリに上手く乗って、リズムよく舞えたと思います。

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今回は、全体的に手ごたえのある舞台成果でした。


しかし、大きな後悔の念が残りました。
ご覧になっていた方はお分かりでしょうが、子方の体調不良です。

今回は次男の大志郎(8歳)が子方を演じました。

今まで、「鞍馬天狗」の花見を2回、後場だけの牛若、「碇潜」、「昭君」と5回子方をつとめています。

それなりにキャリアはあるのですが、今までの子方は短いものばかりでした。
舞台には15分から20分くらいしか出てこないものです。

今回、初めて長い時間舞台に出ている子方に挑戦させました。

「海士」の子方は、謡も型も多く、また1時間半の上演時間中、ずっとじっとしていなければなりません。

難しい役です。

つとまるか心配だったのですが、申合までは滞りなく演じていました。

次男は、人一倍能が大好きな子です。
家でも、暇さえあれば能ごっこをし、能の本を眺めています。

子方をやるのが嬉しくて仕方ないという気持ちが伝わってきます。


上演中、子方を見る度に辛そうにしているのが目に入ります。

もともと落ち着きのない子なのですが、それ以前に明らかに具合が悪そうです。

「うーん、舞台に出るまでは普通だったんだけどなあ・・・」

子供のことが気になります。

「何とか、終演まで踏ん張ってくれ・・・」
祈るような気持でした。

結局、後場の早舞の前にシテから経巻を受け取ったあと、体調不良で舞台から下がりました。

ツラい中、そこまで頑張ったんだなあと思うと、ねぎらってやらなければなりません。

ただ、舞台の最後までつとまらなかったことは事実です。


重ねて言いますが、子供は頑張りました。
子方の失敗は、親の責任です。

このことを、深く肝に銘じなければなりません。



kuwata_takashi at 22:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年02月12日

「海士」申合 終了

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明後日の九皐会「海士」、無事に申合が終わりました。

課題も見つかり、明後日までに調整したいと思います。

次男も、しっかり出来ました。
今までにない大役なのですが、上手くやっていました。

たいした度胸です。


今週は、大変な一週間です。

昨日は「のうのう能別会」が国立能楽堂でありました。
長男が、観世喜正師の「船弁慶」の子方をさせて頂きました。

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長男は、喜正師の「船弁慶」の子方」は4回目ですが、東京では初めてのお相手でした。

国立能楽堂という大舞台でもあるので、本人も張り切っていました。

学校の友達も、何人か来ておりましたので良いところを見せたいみたいです。


長男の「船弁慶」の申合が水曜日で、本番が木曜日。
次男の「海士」の申合が金曜日で、本番が日曜日。

今週は大変です。

「海士」ではシテを演じますので、本来はそちらに全力投球したいのですが、そうはいきません。

子供が舞台に出ると、自分の舞台より神経使います。

さらに、子供が舞台に出る上で健康管理が一番大事になります。

「病気やケガで舞台出れません」は、絶対に避けなければなりません。
シテやツレなど、大人の役者は、何かあっても何とかなります。

そんな時は、後見が代役をします。

でも、子方の代わりはそうそうはいません。

ましてや、今子供の学校でインフルエンザが大流行しています。

長男の学年では学級閉鎖も出ています。

普通の風邪なら、我慢して舞台に出させますが、インフルエンザですとそうもいきません。
周りの人にも迷惑かけますので、舞台に上げるわけにはいきません。

万が一のため、長男にも「海士」を、次男にも「船弁慶」を稽古しておきました。
ただ、兄弟の場合はかなりの確率で同時にインフルエンザにかかりますが、、、


今週はさらに、7日に能「鉢木」のツレを緑泉会で勤め、今日は九皐会申合のあと行われた稽古能では、能「望月」のツレも勤めました。

本当に大変な一週間です。

今日が終わり、心底ほっとしました。

今日明日は、自分の「海士」の稽古に専念したいと思います。



kuwata_takashi at 21:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年02月07日

九皐会「海士」

来週2月14日に、九皐会にて「海士」を演じます。

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この曲は、たいへんに劇的な内容の前場と、祝言性の高い清々しい舞を見せる後場とに分かれます。


見どころも多い能です。


まず、房前大臣がお伴の大臣を連れて出てきます。房前大臣を演じるのは、次男の大志郎(8歳)です。
曲の最初から最後まで登場する子方は初めて演じます。

謡も所作も多い役です。上手くできるか、ドキドキです。

前シテは、海士です。
2年前、NHKの朝ドラ「あまちゃん」に出てきた、海に潜ってウニやアワビをとる女性です。
藤原家の宝のうち面向不背(めんこうふはい)の珠を、龍宮から取り返すシーンが、前場のみどころです。


壮絶な場面です。「玉ノ段」は私の憧れの舞です。
これが舞いたくて「海士」に挑戦するようなものです。

自分の子供に、手紙を渡して姿を消す海士。
それを見送る、房前大臣。

親子の情愛があふれる名場面です。


後場は、成仏した母が龍女の姿となって現れ法華経の経巻を房前に渡して喜びの舞を舞います。この舞の冒頭は、囃子との合わせ方がたいへん難しい「イロエ掛り」となっています。

そして、今回は「クツロギ」という小書(特殊演出)がつきます。

この演出になると、舞いがガラッと変わります。

緩急がつき、型も派手になります。

この舞も、ずっと舞いたいと憧れていた舞です。

丹念に舞いたいと思います。


「海士」は。5年前に、自主公演「能まつり」で演じました。

今回は小書「クツロギ」をつけての再演です。

また次男との親子共演となります。

能の中では、母子の情愛を描きます。

実際は父子での演技は、少々照れくさいですね。

一緒に稽古していると、
「キチンと型を演じているかなあ」
 「キレイに座っているかなあ」

子供ばかり気になります。

精一杯勤めます。


まだチケットはあります。
是非ともご来場ください。



 


 



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2016年02月03日

珍しい対決

九皐会の受け持ちの文化庁巡回公演が、行われています。

九皐会の巡回公演では「船弁慶」が演じられます。

「船弁慶」は、源義経と平知盛が対決します。

源義経は本来は子方として子供によって演じられますが、この巡回公演ではツレとして大人の演者が演じています。

私も今年2回義経を演じましたが、普段子供が演じる役を演じるのは少々気恥ずかしさがあります。

大人ならではの珍しい対決もあります。
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昨日の松戸の小学校では、50才を超えた遠藤和久、喜久兄弟による兄弟対決が見られました。

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そして、今日は中森貫太、健之介による親子対決でした。

こちらは、18年ぶりの組み合わせのようです。

楽屋内は、ホンワカしていました。


kuwata_takashi at 15:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0)