2014年12月

2014年12月31日

2014年 御礼

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2014年も残すところ、あとわずかです。

今年も充実した一年となりました。

今年は、

2月23日(日)若竹能「弱法師」
4月12日(土)富士宮仮宿能「羽衣」
6月22日(日)桑田貴志能まつり「邯鄲」
8月14日(木)深川八幡祭り能奉納「菊慈童」
9月14日(日)九皐会「小督」
12月7日(日)緑泉会「自然居士」

と、6番もの能をお客様の前で演じる機会を頂きました。

ここ数年、だいたいこれくらいの能を演じております。
一代目の能楽師としては、有難い環境だと思います。

来年も、大好きな能を一番一番、丁寧に演じていきたいと思います。

今年は、次男も小学校に入学して、我が家の環境が大きく変わりました。
長男も次男も、能が大好きです。
2人で、ずっと「能ごっこ」をして遊んでいます。

これからも、すくすく成長して欲しいと思います。

来年は、㋀4日からもうシンガポールへ行くことになっております。

年末年始は、つかの間の休日です。
ゆっくりと身体を休めて、来年も充実した年にしたいと思います。


本年も、一年間有難うございました。
来年も宜しくお願い致します。


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2014年12月29日

深川の年末

今年も、残すところあと3日です。

今年は、例年に比べ年末のスケジュールが緩やかなので、地域行事に参加できます。

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まずは、餅つきです。
深川の人は、とにかく餅つきが大好きです。

12月に入ると、毎週どこかで餅つき大会が開かれます。

12月7日は西隣の町会で、14日は私の住む町会で、21日は南隣の町会でやっています。
地域ごとに時期をずらして、開催するのは盆踊りも同じですね。

子供達は毎週のように行っています。

私は、21日に時間があったので行きました。

中学校の校庭で、杵と臼でペッタンペッタン。

餅がふるまわれ、子供達は走り回り、大人たちは餅を肴にお酒飲んでいます。

お相撲さんも何人か来ています。
ウチの子供たちは、お相撲さんとドッチボールして遊んでいます。

そこに、ひときわ巨体のお相撲さんが登場。

近所に住む、幕内力士・大砂嵐です。

初のアフリカ人力士として有名な大砂嵐関は、またイスラム教徒としても有名です。
ラマダン(断食月)の時は、何も食べずに土俵に上がるなど、話題一杯の有名力士が目の前にいます。

相撲ファンの私は、思わず一緒にパチリ。
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その後、寒空の中、浴衣を脱ぎ捨てると、
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よいしょー!!  よいしょー!!

瞬く間にお餅がつき上がりました。

他にも、地域選出の国会議員や都議も混じって、お互いに杵を振るい、次々と餅が出来上がります。

つきたてのお餅の美味しさは、筆舌につくしがたいものです。


さて続いては年末恒例、歳末火の用心です。
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町内を、提灯、警棒、拍子木をもって練り歩きます。

夜中に、「火の~よ~じん」と叫びながら町内を歩き、町の人から「がんばれよー」
と歓声を浴びます。

歩かないときは、詰所に籠って大宴会。
こちらの方がメインの人もいます。

子供火の用心を含めて3回町を回りますが、3回目には酔っぱらって歩けなくなる人もいます。

大人に先立って、子供火の用心です。
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いっちょまえに拍子木を鳴らしながら、威勢良く掛け声をかけています。

「火の~よ~じん。マッチ一本火事の元」

「火の~よ~じん。サンマ焼いても家やくな」

「火の~よ~じん。おじさんタバコを捨てないで」

子供達は、お友達と夜に歩き回るのが楽しいようです。

この時期だけは、親公認で夜出歩けます。
終わった後は、ご褒美としてお菓子とジュースももらえます。

ウチの子供達も、火の用心をとても楽しみにしています。


こんなふうにして、年は暮れて行きます。
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地元の商店街には、こんな大きな飾りが登場しました。

材木の街・木場の名残を今に伝える飾りです。
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「木材を使って、へらそうCO2」 だそうです。


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2014年12月17日

文化庁巡回公演 福井から

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文化庁学生能巡回公演、昨日は京都府京丹後市。今日は、福井県小浜市。

爆弾寒波とも謂われる猛烈な寒さの中、学校の体育館での能公演です。

昨日の学校は雪に覆われていました。
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今日は、快晴で雪には遭いませんでした。

ところで、小浜市と言えばオバマ米大統領と名前が同じということで、オバマ大統領と親交を深めたところとして有名です。

私達の業界的には、狂言「昆布売り」に出てくることで有名です。

今日の狂言ワークショップでは、この「昆布売り」の謡と所作を体験していました。


私は福井県に行くのは、高校の修学旅行以来で3回目です。仕事では初めてです。
小浜市にも初めて訪れました。

日本全国津々浦々に、小学校と中学校はあります。

普段、あまり行かないところに訪れるのも、学生能巡回公演の楽しみの一つです。

福井県から明日はまた京都へ戻ります。
2時間半のバス移動です。

バス内は、やることが無いので、日記の更新が進みます。


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2014年12月16日

シンガポール公演 レポート


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もう、ひと月経ってしまいましたが、シンガポール公演の記事を書きます。

この1ヶ月は、怒濤の忙しさで全く更新出来ませんでした。


さて、11月13日から16日までシンガポールに行って来ました。

市川海老蔵丈が主催する、「古典への誘い」という公演に呼ばれて参りました。

テレビや新聞や雑誌などで取り上げられていたようですので、ご覧になった方もいらっしゃるかも知れません。

流石に市川海老蔵さんです。
やることのスケールが大きいです。
マスコミへのインパクトは、絶大ですね。

会場は、シンガポールのランドマークとなったマリーナ・ベイ・サンズ内にあるサンズ・シアターです。
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あの屋上に船と空中プールがある、あの建物です。
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ちなみに、下から見るとこんな感じです。

とにかく豪華絢爛の佇まいに、経済発展を続けるシンガポールの勢いが感じられます。

そこに、日本の古典芸能が乗り込んでいきました。

演目は、まず市川海老蔵丈による口上。
冒頭は英語で述べていました。

楽屋でも、折に触れて呟いていた英語の口上は、見事に決まり、会場は大ウケでした。


続いて、古今亭文菊さんによる落語「転失気」

文菊さんは、全編英語で語っていました。

言うまでもなく落語は、話芸です。
本来は寄席のような小さな会場で、息遣いや間合いで聞かせる芸です。

会場は、1600人も収容する大きなホールです。
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ここで落語をやるってだけで、凄いことです。

それを、外国人相手に英語で語っているのですから、驚異的です。

流暢に語られた英語落語に、満員のお客様は大爆笑でした。

後で聞いたら、文菊さんは全く英語が喋れないそうです。

英語で落語をやっている先輩に教わって、ひたすらこの演目だけ覚えたそうです。

いやあ、感服しました。


そして、次はいよいよ能「石橋」です。

私は地謡でした。
地謡は何と2人だけです。

この広い会場で、マイクも使わず2人で謡わなければなりません。

とにかく、気合いを入れて謡いました。
何と言っても、日本代表です。
ショボい地謡にはしたくありません。

もう一人の地謡の人と、力を合わせて懸命に謡いました。

観客席で見ていたシンガポールの演劇学校の学生さん達に聞いたら、地謡は力強く轟いていたそうです。

白獅子と赤獅子を勤めたのは、観世会の人達でした。

私が所属する九皐会とは、型ややり方が違います。
なかなか刺激的でした。


そして最後が、市川海老蔵丈と市川福太郎丈による「連獅子」でした。

間近で見る海老蔵さんは、やはり華があります。

舞台袖という特等席で、ジックリ拝見しました。

能と歌舞伎。

こうして同じ演目を続けて見ると、違いがよく分かります。

江戸時代、武士によって育まれた能と、町人に愛された歌舞伎。

能は、真っ直ぐ力強く演じるのに対し、歌舞伎は豪華絢爛で華やかです。

武士の文化と、町人の文化がハッキリと見てとれました。


これだけの演目は、日本でもなかなかお目にかかれません。

シンガポールという国の、文化に対する懐の深さが計り知れます。

1600人の会場が、4公演とも満席だったのも驚きです。

シンガポール人の文化レベルの高さは、たいしたものです。
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こんなものも頂きました。


今回のシンガポール公演に参加したシテ方は、私以外は観世会所属の人達でした。

同じ観世流ですが、普段はあまり舞台でご一緒しません。

みな同世代だったので、一緒に舞台を勤めて良い刺激になりました。

4日間一緒に過ごし、酒を酌み交わし、色々な話をしました。

お互い、それぞれの立場でそれぞれ頑張っています。

なかなか有意義な時間が過ごせました。


さあ、年明けからシンガポールの演劇学校(ITI)の授業も始まります。

英語頑張らなくっちゃ。。。


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2014年12月15日

「自然居士」御礼

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緑泉会にて、能「自然居士」無事に演じ終わりました。
ご来場の皆様、どうも有難うございました。

終わった今の感想は、「とにかく疲れた!」です。

この能は、しどころが多くて大変でした。

前半は、ワキとの激しいコトバのやり取りが見どころです。

ワキは、福王流の若宗家・福王和幸師でした。
普段は、長身で端正な顔立ちの好青年ですが、この日は人商人らしく、激しい口調で迫ってきます。

こういった能は、芝居っ気を出さないと味気無いものになってしまいます。
私も負けじと、強い口調で応戦しました。

力一杯の、コトバの応酬です。
ガンガンと責めていくうちに、ホトホト疲れてしまいました。

前半は、とにかくそんな調子です。

「自然居士」の前半はひたすらコトバを語っています。

コトバは半端ない量です。キチンと覚えるのは時間がかかりました。

もちろん、覚えてからが勝負です。

コトバの意味と文脈を吟味して、感情を入れて謡いました。

何と言っても、この能のシテは、さらわれた少女を命懸けで助ける正義の味方というカッコいい役どころです。

ヒーロー気取りで、気張って演じました。

前半はずっと力任せに謡い続けたので、ヘトヘトになりました。

兄弟子から、「こういう曲はペース配分を考えないと大変になるよ」
と言われていましたが、まさにその通りになりました。

前半で体力を使い果たした感じです。

さあ、ここからが本番です。

後半は、中之舞、クセ舞、簓之舞、羯鼓とこれでもかというくらい舞が続きます。

正念場を迎えたと思いました。

ところが、舞になったら身体がスムーズに動きます。
さっきまでの、疲れきった身体は何処行ったのでしょう。

舞は、とことん稽古しました。
自然に身体が動きます。

自分でも驚く位、自由闊達に舞えたように思います。

この能は芸尽くしの能ですから、舞が面白くないと、成り立ちません。

我ながら、首尾よく舞えたと思います。


今回感じたのは、謡で費やす体力と舞で必要な体力は別ということです。

力任せに謡って、ヘトヘトになった身体でこれだけ躍動的に舞が舞えたのは収穫でした。

何となく、私の身体の奥底と会話出来た気がします。


子方は、長男の潤之介(小学2年生)が勤めました。

この能の子方は、1時間ほど動かずに座っていなければなりません。

難しい役です。

まず、足が痛い。
1時間もの間、左膝立てて座っていなければなりません。

子供にとって、1時間の正座でもツラいでしょう。

ましてや左膝立てていると、右足に全体重がのります。
両足で座る正座より、圧倒的にツラいのです。

そして、子供にとって1時間もジッとしたまま動けないことも、拷問に近いことでしょう。

この能の子方は、謡もなければ動きもありません。

ひたすら動かずに座り続けなければなりません。

子供にとって、喋らず動かずジッよしていることほどツラいことは無いでしょう。

大変に難しい子方だと思います。

長男は立派に演じました。

身動ぎもせず、ワキ座に座っていました。

長男も、子方を何番も演じたので、少しずつプロ根性が出てきたように思います。

終演後、思い切り褒めてやりました。


このシンドイ能「自然居士」を演じ終えて、面白い能だったなあと思います。

見どころ満載のこの能は、演じる方にとっても楽しいものです。

このような芝居かかった能は、今まであまり演じてきませんでした。

上手く演じる自信がなかったからです。

能としての魅力も、あまり感じていませんでした。

今回は、良い経験になりました。

こういった劇能も、良いものだなあと感じました。

これから「鉢木」「望月」「安宅」など、芝居かかった劇能の高みを演じられるように、精進したいと思います。


身体中に疲労が残っていますが、満足感も一杯です。


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