2014年05月

2014年05月23日

相撲は伝統芸能

1401004418359今日は、両国国技館にて相撲観戦です。
次男が通っている小学校の同級生に、某有名幕内力士の息子がいるので、家族で応援に出かけました。

今年の4月の入学式のことです。

フォーマルな洋服を持っていないので、入学式には着物で出かけました。

そんなこと言うと、「えー!! 凄く目立ったのではないですか?」
などと言われます。

でも、下町・深川では男性の着物姿もチラホラ見かけます。
何より、お祭り総代の正装は着物に半纏ですので、総代や町会役員の葬儀などでは、着物姿のイカツイ男たちがズラリと並んでいたりします。

母親の着物姿は、かなり普通です。

そういう風土ですので、次男にも着物着せて入学式に行こうかしらなどと、ちょっと考えましたが、次男がネクタイを着けたがっているのでやめました。

案の定、着物姿のお父さんは他にもいました。
しかし、そのお父さんは、着物プラス髷だったのです。

クラスでちょっとお話しすると、バリバリの現役力士です。
その場で、「5月場所は応援に行きます。」と約束しました。

残念ながら、同級生のお父さんは負けてしまいましたが、子供たちは初めて生で見る相撲に興味シンシン。

横綱の土俵入りを見て、
「あれは何?」

うーん困った。
「あれはね、土俵の神様にお祈りしているんだよ。ほら、君たちもお稽古の前に、神様にパンパンと手を合わせるでしょう。それと同じだよ」

我が家では、子供にお稽古する前に、舞台に祀られている神棚の前で必ず「二拝 二拍手 一拝」をさせていますので、横綱の柏手に納得した様子です。

「どうして審判は、能の着物を着ているの?」
「あの審判は、行司といってとても神聖な人なんだよ。だから、装束といって能と同じ着物を着ているんだよ」

「どうして、なかなか戦わないの?」
「相撲はね、取り組みと取り組みのあいだの間合いを楽しむものなんだよ。ああやって、呼吸を合わせてお互い良い状態で勝負するんだよ」

私の答えが正しかったのか、分かりません。

でも、言われてみれば不思議なことだらけです。
やはり相撲は普通のスポーツとは違います。

そもそも、相撲の成り立ちは神事から始まり、徐々に神社などが勧進のための相撲興行を始めて、今のような形になったと聞いています。

成り立ちは、能と全く一緒なのです。

相撲は、スポーツであるけど、同時に伝統芸能でもあるようです。

私たちが見ていた席は、安い二階席だったこともありますが、周りのお客さんは外国人ばかりでした。
普通のスポーツ会場で、こんな光景はまず見ません。

それと、着物を着た上品なご婦人が多くいたことも印象的でした。なんだか、能や歌舞伎の観客席を思い起こします。
九州場所で、芸者さんが大挙して観客席に陣取るのも、風物詩として知られます。

野球やサッカーの観客席に、着物着た人はまずいないですしねえ。

ははは、やはり相撲は伝統芸能だ。

kuwata_takashi at 19:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月18日

「安宅」三題

先日、文楽を観に行きました。

今月は敬愛する竹本住大夫師の引退公演です。
是非とも最後の勇姿を目に焼き付けようと心に誓っていました。

ただ痛恨なことに、チケット発売日を一日間違えてしまいました。
一日遅れで電話したら、引退狂言の演じられる第1部は、全て売り切れですと言われました。

ナント即日完売です。
住大夫師の人気の凄さを思い知りました。

でも、少しホッとしたような気もします。

住大夫師は大病の末復帰したけど、昔のように語ることが出来ないので引退なさるそうです。

つまり、あの住大夫師の至芸は本当の意味で、もう聞けないのです。

今まで聞いた住大夫師の語りの数々は、胸に刻みこまれています。
それで、もう充分じゃないかなあ。。。。
引退狂言は観れなくて、かえってよかったと自分を納得させました。

第2部の演目を見ると、これも前から見たかった「女殺油地獄」と「鳴響安宅新関」です。
今月は第2部だけの鑑賞することにしました。

「女殺油地獄」は、題名から色っぽい内容を想像していましたが、凄惨な内容でした。
この演目は、歌舞伎にもなっていますが、人間がこんな役をどう演じるのか不思議になります。

まさに人形劇だからこそ成り立つ、文楽らしい演目でした。
たっぷりと堪能しました。

もう一番の「鳴響安宅新関」は、歌舞伎の「勧進帳」を文楽に移したものです。
「勧進帳」は、言うまでもなく能の「安宅」を歌舞伎化したものです。

これもずっと観たいと思っていた演目です。

華やかで豪華な演出で、楽しめました。
でも、、、、なんか物語に入っていけない感じがします。

やはり、「勧進帳」は人間がやった方が迫力があります。
観終わった後、なんだか「勧進帳」が観たくなりました。

そんでもって、家に帰ってDVDに保存してある松本幸四郎師の「勧進帳」を観てみました。
ほとんど文楽と同じです。

一度に、文楽と歌舞伎で同じ演目を堪能するという、至福のひと時でした。


ところで、今までいろんなものを見てきましたが、相対的に、文楽から歌舞伎に移された演目は、圧倒的に文楽で見る方が面白いと感じます。

逆に、歌舞伎から文楽へ移された演目は、やはりオリジナルの歌舞伎の方が断然良い。

これが、文楽らしさ、歌舞伎らしさということなんでしょう。
それぞれに良さがあり、それぞれに得意とする分野がある。

日本文化の奥深さを感じます。


さて、そんなことを思っていたら、今日は池袋の東京芸術劇場にて「としま能」
演目は「安宅」でした。シテは観世喜正師です。

「安宅」では、圧倒的に山伏役を演じることが多いのですが、今日は珍しく地謡でした。

山伏として演技していると、なかなか舞台の全体像はつかめません。
地謡だと、比較的全体を見渡せます。

文楽、歌舞伎と来て、最後は能。

これだけ近い日時に観ると、どうしても比較してしまいます。

「どれが一番面白かった?」
という質問は、野暮です。

「それぞれに良さがある」としか答えられません。

でも、「どれが一番好き?」の答えは決まっています。

「それは、断然能です。」


kuwata_takashi at 23:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年05月16日

「鉢木」 地頭

九皐会の若手の稽古会「若竹会」で「鉢木」の地頭を勤めました。

地頭は文字通り地謡のリーダーです。
本来、最も序列が上の人が勤めます。

九皐会門下準職分の序列では、一番下の私が地頭を勤めることは本来ありません。

ただ、そこは稽古会ですので勉強のためにさせて頂くことがあります。

今日は、その有難い機会を頂きました。
しかも、演目はなんと「鉢木」です。

この能は、九番習に数えられる大変に難しい能です。
地頭の経験が数えるほどしかない私には、随分高いハードルです。

ここ数日は、暇さえあれば「鉢木」を謡っていました。
特に車の中では、フルパワーで謡っていました。

先日10日には山梨県甲府市にて「武田神社薪能」がありました。
往復の車中は、良い稽古場になりました。


それで成果は、、、、まあこんなものかなあ。。。

とにかく謡いまくったので、文句や間合いに不安はありません。
でも、「鉢木」の曲のムードや位は、上手く作れたとは思えません。

ただ、「鉢木」という手ごわい能の割には、謡っていて不思議と余裕がありました。

今まで地頭を勤めるというと、とにかく多大な緊張を強いられていましたが、今回はそこまでではありませんでした。

それは、唯一の収穫かなあと思います。


kuwata_takashi at 23:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)