2009年10月

2009年10月25日

米沢から直江津

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今日は、直江兼続ゆかりの直江津で、新作能「兼続」公演。

直江兼続といえば、越後から最後は会津米沢に移り住んだことで知られます。

そのゆかりの地・直江津に行くに当たって、東京駅で素敵なものを見つけました。

米沢名物 牛肉弁当 牛肉どまんなか


あの有名な弁当です。
たまたま、駅構内で駅弁フェアをやっていたのです。

米沢名物弁当を食べて、直江津へ向かう。

まさに直江兼続の人生をさかのぼるかのごとく・・・

今日の「兼続」は上手くいきそうです。


at 10:39|Permalink

2009年10月23日

みんな芸術が好きだった

今日は、臨床美術士の養成講座の特別授業にて、能の仕舞の実習を行いました。

臨床美術士とは、芸術を使った医療行為を行う人のことです。

臨床美術とは、絵や造形などに取り組むことで脳の機能を活性化させて、心身のケアとサポートを行う医療でして、主に認知症や心の病に侵された方のリハビリとして、大きな注目をあびています。

ひょんなことから、臨床美術士の養成講座の講師と知り合いになり、身体表現研究の授業で特別授業を受け持っております。
だいたい、半年に一回くらいのペースで授業をさせていただいております。

私を授業に招いて下さる臨床美術士の先生とは、打ち合わせをかねてしばし飲みに行きます。
あるとき、聞いた話は心に残りました。


「認知症の治療に何故芸術が必要なのか?
それは、人間は誰でも芸術が大好きだからだよ。

元来、歌を歌ったり絵を書いたりすることが嫌いな子供はいない。
人間は歌や絵が大好きなんだよ。

でも、学校に行って歌や絵に評価を加えるようになって、嫌いになっていくんだ。」


確かに、今3歳と2歳の私の息子たちは、そろって歌やお絵かきが大好き。

教育テレビの子供番組から流れてくる歌に合わせて、歌って踊って大はしゃぎですし、暇さえあれば、クレヨンでとても芸術性の高い(訳のわからない)絵を描いています。

そういえば、私も子供のころは大好きでした。


歌を歌ったり、絵を描くことは、脳の活性化にとても良いそうです。
だから、とっても健康に良いことなのです。

では、毎日謡っている私は・・・
脳が活性化している・・・はずです。


at 22:16|Permalink

2009年10月11日

羽衣伝説

昨日は、能「羽衣」のご当地・三保の松原にて「羽衣」の上演という素晴らしい催しでした。

有名な「羽衣伝説」ですが、能「羽衣」では舞台は三保の松原となっています。
ところが、この「羽衣伝説」は至る所にあるそうです。

先週公演で行った、京都の丹後地方にも「羽衣伝説」は存在し、「羽衣の里」という場所もあります。

清水や丹後だけではなく、本当に色んな場所に存在します。
有名なところでは、滋賀県伊香郡余呉町余呉湖、千葉県佐倉市、鳥取県東伯郡湯梨浜町羽衣石、大阪府高石市羽衣、沖縄県宜野湾市真志喜 などです。


去年、バリ公演に行ったとき、時間が空いたので、美術館に行きました。
アルマ美術館という、バリ絵画の美術館です。

神々が住む島と言われるバリです。生活と信仰が一体化しているこの島で描かれる絵画は、ほとんどすべてが宗教画です。
圧巻の絵画の数々をのんびりと眺めていると、凄い絵を見つけました。

バリの神々の絵の中に、天女のような神が描かれている絵を見つけました。
しかも天女は木に衣を掛けて水浴びしています。
そして、その衣を男が、まさに盗もうとしている瞬間の絵です。

バリという所はありがたい所で、美術館の絵画の説明にも全て日本語表記があります。
その説明文を読んでみると・・・

「7人の天女が水浴びをしている。猟師のラジャパラは天女ケン・スラシーの羽衣を盗みとろうとしている。こうしてケン・スラシーは地上に留まらざるを得なくなる」

これはまさに、「羽衣伝説」です。
バリでは、7人の天女のうち、1人だけが地上にとどまってしまう伝説のようです。

よく、「羽衣伝説は日本だけでなく、世界中にあります」
などという説明を見ますが、その実例を目の当たりにしました。

バリの「羽衣伝説」に基づいた絵画は、他にも数点存在したので、バリでは結構広く知られた伝説であると思われます。
調べたら、羽衣伝説を基にした「ラジャ・パラ(Raja Pala)」というバリ舞踊まで存在するようです。
舞踊の「ラジャ・パラ」と上の絵の説明文とでは、話や舞台が違いますので、バリの「羽衣伝説」にも色んなバリエーションがあるようです。

それにしても・・・
バリには、獅子舞(バロン)もあるし、「羽衣伝説」もある。
バリ舞踊と能の関連性も、広く言われています。
日本芸能との共通点の多さには驚かされます。


at 22:38|Permalink

あれ・・・ 何時だっけ?

今日は、九皐会の10月定例会。
最近のハードなスケジュールで疲労困憊。
所要時間1時間50分の「江口」の地謡は、さすがに足にきました。

その後、飛び跳ねる仕舞「善界」をさせて頂き、もうてんやわんやでした。

ところで、今日、能「江口」の地謡を謡っていて、ふと思いました。

「あれ、申合は何時だっけ?」

簡単です。九皐会の申合は前々日の金曜日と決まっています。
金曜日に申合を終えた後、午後から都内某所で簡単な講座と次のワークショップの打ち合わせをすませ、夜は昭島古式薪能にて新作能「兼続」を謡いました。

夜中に帰宅して、翌土曜日は朝8時半から、来週の別会で演じられる「邯鄲」のお稽古に矢来能楽堂に参ります。
終わるや否や、三保の松原に移動して、昼は能楽教室。夜は、薪能にて「羽衣」の後見と「安宅」の山伏。。。。

わずか2日前なのですが、申合がずいぶん昔に感じられました。


at 22:26|Permalink

2009年10月10日

三保の松原 羽衣まつり

今日は、静岡県清水の三保の松原にて薪能。

三保の松原といえば、言わずと知れた、あの名曲「羽衣」のご当地。
この薪能では、毎年、能二番のうち一番は必ず「羽衣」が上演されます。

今年は、もう一番は「安宅」と、これもまた大人気曲です。文句のつけようのない組み合わせです。


私は、清水の隣の富士には月二回お稽古に行っているのに、三保の松原へ行くのは初めてです。
あの「羽衣」の舞台に行けるのは、素直に楽しみです。

昼過ぎに到着すると、もうすっかり舞台は組み上がっています。
能舞台後方にそびえたつのが、かの有名な羽衣の松です。
さすがに見とれました。

この松に、天女は衣をかけて水浴びしていたのか・・・

海を望むと、富士山が見えます。今日は、残念ながら上の方は雲がかかっていて、ふもとの方しか見えませんでした。
舞台の上から、富士山の方向を見上げると、面白いことに気が付きました。

富士山と沼津にある愛鷹山と、富士にある浮島台地がほぼ一直線なのです。

謡曲を嗜む方は、かの有名な「羽衣」のキリを思い出して下さい。

「三保の松原 浮島が雲の。愛鷹山や富士の高嶺」

見事に結びつきました。


開演に先立ち、能楽教室が行われました。

そこでは、能装束の着付けの実演があり、私はモデルを致しました。

私のいかつい風貌が、徐々に天女になっていく姿に、お客様は楽しんでいる様子です。

装束が付き終わりました。そこで解説者が一言。

「せっかくですので、『羽衣』の一部を舞って頂きましょう」

「え!!! 聞いていない」

バックから「羽衣」のキリの謡が聞こえてきます。

「まあ、『羽衣』ならぶっつけでも何とかなるだろう」

舞っていると、何とも幸せな気分になってきます。

今、私は「三保の松原」で「羽衣」を舞っているんだ・・・

少し恍惚を感じながら、例の場所「愛鷹山や富士の高嶺」にきました。
能舞台のワキ座と呼ばれる場所から、常座と呼ばれる場所へサシという型をした時-ーー

何と、能面の狭い視界の先に愛鷹山がはっきり見えました。
その向こうには富士山も見えます。

「愛鷹山や富士山の高嶺」という謡に合わせながら、「愛鷹山」と「富士山」を見込む。

こんな素晴らしい瞬間があるでしょうか。

舞台設計者がそこまで考えていたかどうか分かりませんが、至福の時を過ごすことが出来ました。

「三保の松原」で「羽衣」を舞わないと出来ない経験・・・
これは、一生の宝物ですね。


at 22:20|Permalink