2022年08月07日

深川江戸資料館「能楽はじめ」

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深川江戸資料館のリニューアルオープンを記念して、「能楽はじめ ~劇場版~」が深川江戸資料館 小劇場にて開催されました。

この催しは、いつもは江戸時代の深川の町並みを模した展示の中にある、火の見櫓の前で行っていました。
今回は、こけら落とし公演なので、資料館内の小劇場での開催でした。

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こんな素敵な劇場にて、こけら落としにちなんでおめでたい演目の謡と仕舞を披露しました。
当日は、多くのお客様にお運びいただき、嬉しく思います。


手術後、人前で仕舞をするのは初めてでしたので、講座の前はけっこう不安でした。
やってみると、スイスイ身体が動きました。
お客様に見守られると、思わぬ力が出るものですね。

終演後は、さすがに疲れました。
手術後、まだまだ体力が戻っていないなあと、思い知らされました。


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2022年08月01日

深川江戸資料館再オープン記念「能楽はじめ」

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地元・深川江戸資料館は改装工事を終え、8月1日にリニューアルオープンを迎えます。
その最初の日曜日に、深川江戸資料館内の小劇場にて舞台披き公演を担当いたします。

「能楽はじめ ~劇場版~」と題して、おめでたい能の舞や謡を紹介しながら、楽しくお話したいと思っております。

毎年、展示室の火の見櫓の前で行っていた「能楽はじめ」を劇場に移して、拡大バージョンで開催いたします。


この深川江戸資料館は、江戸時代の深川の街を再現した楽しい展示がならんでいます。
都営交通とトリップアドバイザーが行った「TOKYO100」という外国人に紹介したい東京の観光名所のアンケートで、堂々の52位にランクインされています。これは、スカイツリーや歌舞伎座よりも高い順位です。

この資料館に見学を兼ねて、是非ともお運びください。

8月7日(日)14:00~15:00 深川江戸資料館 小劇場

入場無料という大盤振る舞いです。
要予約で、先着150名さまになります。



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2022年07月31日

高校野球 息子の応援 

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今日は、炎天下の中、息子が所属する高校の軟式野球部の応援に行きました。

いわゆる甲子園大会がある高校野球は、硬式野球の大会です。高校の部活にはもう一つ軟式野球があります。
軟式野球と硬式野球は、使用するボールが違うだけです。同じルールで行われる競技です。
甲子園大会やプロ野球などは全て硬式野球ですので、一般的な人気は硬式野球の方が圧倒的にあります。
レベルも、硬式野球の方が高いと思います。

息子が所属するのは軟式野球部です。
軟式野球部にも全国大会があり、只今東京都予選を行っています。

息子の高校は、勝ち上がり、本日東京都予選の準決勝を戦います。
一年生の息子はスタンドで応援しています。

でも、花の高校野球。この試合に勝てば決勝進出という大事な試合です。
私は今日仕事がありませんでしたので、駒沢球場で行われる試合に応援に行きました。

高校生の野球って、素晴らしいですね。
私は感動してしまいました。

負ければ、その時点で高校野球が終了するという緊迫したトーナメント大会ならではの、緊迫した雰囲気の中、ひたむきにプレーする高校生たちに、敵味方の区別なく、惜しみない拍手を贈りました。

花の高校野球のスタンドで、息子の学校を応援している自分に酔っていました。
「何だか漫画の中の登場人物みたい・・・」

息子の高校は見事に勝ちました。勝つと、球場に校歌が流れます。
「勝ちました学校の、栄誉を称え、校歌の演奏と校旗の掲揚を行います」
あのお馴染みの放送が流れ、校歌が演奏されるのを聞いて、ジーンときました。
「ドカベンやタッチ(漫画の名前)みたい。。。」


明後日が決勝戦です。
勝つと、8月下旬に明石トーカロ球場で行われる全国大会に進みます。

明後日は仕事がありますので残念ながら応援に行けませんが、気持ちはしっかりスタンドで応援しています。
頑張れ!!!


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2022年07月18日

入院から・・ 経過良好 

桑田貴志 プロフィール写真  - コピー (2)

先日の「葵上」の舞台報告でお知らせいたしましたが、入院しておりました。
鼠径(そけい)ヘルニアを患いました。いわゆる脱腸です。

この病気は、子供のころか50過ぎの年齢でなる人が多いそうです。
下腹部の足の付け根あたりを鼠径(そけい)部と言いますが、そこは腹膜が薄いそうです。
鼠径部に穴が開いて、腸や大網などの臓器が出てくる病気だそうです。

子供のころになる場合は、先天的なものがほとんどだそうです。
大人になってなる人は、加齢により腹膜が薄くなってなることが多いそうです。

力仕事や立ち仕事など下腹部に力を入れる仕事をしている人がなりやすいようです。
まあ、能楽師は常に下腹部に力を入れて謡っておりますので、なりやすい職業かもしれません。現に、聞くと鼠径ヘルニアを患っている能楽師はそこそこいるようです。


とにかく、ここひと月ほど、ぼんやりとした痛みがずっと続いておりました。6月16日にどうにも激しく痛むので、慌てて病院を予約しました。
6月26日に主催公演「能まつり」を控えておりましたので、その前に憂いをなくそうと思って受診しました。

そこで鼠径ヘルニアであることがわかりました。
この病気は治療や投薬では治りませんが、手術をすればすぐ直るそうです。
外科手術ではもっともポピュラーな手術で、年間15万件から20万件も手術が行われているそうです。

まあ、そう言われると、安心です。主催公演の前にお腹を切るのは怖いので、その翌日から入院手術をすることにしました。
とにかく「能まつり」までは安静にして、身体を休めて「葵上」に臨みました。


主催公演の翌日から5日間の入院です。その際、一番ドキドキしたのはPCR検査です。

入院患者は、入院の72時間以内にPCR検査をしなければなりません。
私の場合、土日を挟むので金曜日に受けなければなりません。

「あの~、PCR検査が陽性だったらどうなりますか?」
「入院は延期となります」

いや、入院が延期になるのは良いのですが、金曜日の段階でPCR検査陽性だと、日曜日の主催公演に出演することは出来ません。そうなるとどうなるのだろう。
チケットはかなり売れておりますので中止には出来ません。座長公演なのに、代役を立てなければならなかったでしょうね。

もちろん、感染対策は気にし過ぎなほど行っております。外での会食もここ2年半ほど行っていません。
でも、第7波と言われる昨今の感染状況では、どこで感染してもおかしくありません。
金曜日は、午前中に主催公演の申合を行って、午後にPCR検査でした。

PCR検査は今まで何度も行っておりますが、一番緊張する検査でした。
まあ、緊張したところで検査結果は変わりません。無事に陰性判定でホッとしました。


さあ、病院に行き手続きをして入院です。初日は手術前日ということで、昼から何も食べず、下剤と浣腸で胃と腸を空にします。この日はのんびりとしたものでした。

二日目に手術です。人生で3度目の手術です。
1度目は小学校4年生の時に左手骨折。2度目は高校2年生の時の盲腸です。

鼠径ヘルニアの手術は全身麻酔です。手術時間は3時間ほどだったそうですが、あっという間でした。
麻酔で寝ている間に、あっさり終わっていました。

直後はは麻酔も効いているので、痛みはありません。
麻酔が切れてくる夜からが大変でした。

その日は傷口が開くといけないので、寝返りも禁止です。
でも、一日中ベットに仰向けに寝ていると、腰と背中が痛くてたまりません。

仰向けに寝ていると、本も読めないしテレビも見れません。スマホをいじっているとすぐ手が疲れてきます。
仕方がないから、ラジオをずっと聞いていました。
最近は「radiko」というアプリで全国のラジオをスマホで聞くことが出来ます。私は、贔屓の広島カープの試合を聞くために、ずっと広島のラジオを聞いていました。

私が入院したころ、ちょうどカープにメジャーリーガーの秋山選手が加入が発表されました。
広島のラジオ局では、朝から晩まで秋山選手特集をしていました。おかげでとっても詳しくなりました。

入院の前は、「手術したら動けないからのんびり過ごすぞ」なんて思っていましたが、全くのんびりできません。
まず、傷口と患部が痛い。そして酸素マスクや心電図がつながれていて、なおかつ寝返りもできないのでベットの上で身動き出来ないという辛さ。

とにかく、苦痛だったのでラジオを聞くしかありませんでした。
しかし私が入院していた期間、カープは3連敗。ラジオを聴いていても苦痛でした。

3日目の午前中に、心電図の管と酸素ボンベは外され少し自由になりました。午後には徐々に歩くことが出来るようになりましたが、手すりにつかまりながらヨチヨチ歩きです。

3日目の晩からようやく食事を食べることが出来ました。病院食はまずまずでしたが、とにかく味が薄く量が少ない。まあ、お腹もすかないので、無理やり流し込んだ感じでした。

4日目になると、痛みはかなり引いてきました。でもお腹に力が入りません。
「お腹に力を入れると痛い」のではなく、「全くお腹に力を入れることが出来ないのです」

人間って、お腹に力が入らないとかなり行動が制限されます。
歩くのはもとより、立ったり座ったりもツライ。しゃべるのも一苦労。
また、お腹が痛むので、笑うのは厳禁。せきやくしゃみをしようものなら激痛がはしる。

でも夜になると、だいぶんマシになりました。
夕食を食べても、病院食だと物足りないので、病院の隣のコンビニまでおにぎりを買いに行く元気がありました。(後で、勝手に外出しないで下さいと看護師さんに怒られてしまいました)

5日目、まだまだ痛み、日常生活はままなりませんが、退院しました。

そのあとは、一週間ほど自宅で養生しました。
徐々にできることが増えてきました。

退院から一週間後に舞台に復帰しました。
翌週7月10日の観世九皐会では、めったにないことなのですが、地謡のリーダーである地頭の大役を頂いておりました。
相変わらずお腹に力は入りませんが、精一杯謡いました。
周りの人に聞いたら、声はしっかり出ていたそうです。
「かえって変な力みがなくて良かったよ」と言ってくださる方もいました。

なんとか地頭の大役を務められ、ホッとしました。

1観世九皐会の翌日11日は、夏の稽古会である歌仙会。
今年は舞うのは辞退して、地謡に専念。地頭も二曲つとめました。
終わった後さすがにぐったり疲れました。体力はまだまだ戻りません。

先週からお弟子様のお稽古も徐々に始めております。今週からは、延期していたお稽古等がぎっちり入り、大忙しになります。ちょっと体力が心配ではあります。


ざっと、入院の様子からその後の経過まで書いてみました。
病気になると、健康な身体の有難さを痛感いたします。

これからも健康に留意して、元気よく舞台に稽古に励みます。


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2022年06月26日

「葵上」御礼

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12回桑田貴志能まつり「葵上」、無事に終わりました。

たくさんのお客様にご来場を賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。

 

一昨年はコロナ禍により中止。

そして昨年は緊急事態宣言下での開催でした。観世能楽堂が入っている商業施設GINZA SIXが閉館している中で、お客様も50%に制限してひっそりとした開催でした。

今年は、華々しく開催できましたことを、うれしく思います。

 

実は今年の公演を開催するにあたって、大きな懸念材料がありました。

 

最近、下腹部に痛みが続いておりました。公演の10日ほど前、その痛みが激しくなってきたので病院でみていただいたところ、「鼠径(そけい)ヘルニア」と診断されました。いわゆる脱腸です。

 

鼠径ヘルニアは手術しないと治らないので、お医者様はすぐに手術をした方が良いとおっしゃいます。そうは言っても主催公演が終わるまで手術なんてとてもできないので、公演までは痛み止めの薬を飲んでやり過ごすことにしました。

 

それから10日間は、お弟子様のお稽古も中止してひたすら身体に負担がかからないように努めました。

充分休んでいたので、公演当日はすこぶる体調は良かったです。いつもは一錠飲んでいる痛み止めを、この日は二錠飲んで「葵上」に臨みました。

能が始まると、アドレナリンが出まくりますので、痛みは全く感じません。思う存分演じることが出来ました。


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冒頭、六条御息所の独白が続きます。この場面の謡は力の入る箇所です。恨みを込めて謡う中にも、六条御息所としての気品が必要となってくる難しい謡です。

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いつもは変に力んでしまうのですが、この日はうまく謡えたように思います。

冒頭から前場の中ほどのクドキという段落までの間に、いかに世界観を構築するかが「葵上」のキモであると思います。クドキを首尾よく謡い終え、身体に力がみなぎってきます。「良い状態で演じているな」感じられました。

不思議なもので、集中していると自分を客観的に見ることが出来るものです。

 

前場のクライマックスの枕之段も、上手く出来ました。

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ここは、抑えていた感情が爆発するところです。気持ちをカケて演じました。

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葵上をかたどる小袖に扇を投げるシーンも良い具合で出来ました。そして着ていた唐織を脱いでうずくまるシーンもバッチリ決まりました。

ここはうまく唐織が脱げなかったりして、事故の多い場面ですが、後見が工夫して唐織を着付けてくださいましたので、上手く出来ました。

この場面の唐織の着付け方と、唐織の脱ぎ方には、様々な口伝や工夫があります。首尾よく出来てホッとしました。

 

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さて、後場は「空之祈」という小書により劇的になります。

装束も、緋長袴(ひのながばかま)という見た目も鮮やかなものになります。ただ、この緋長袴はとても動きにくいのです。事前に履いてみて練習したところ、優雅に裾を扱っていては、足にまとわりついてうまく動けません。少し大胆にバサバサと裾をサバかないといけません。裾をサバくのも型として、乱暴にならないように心掛けました。

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初めて緋長袴をはきましたが、その割にスムーズに動けたかなあと思います。

 

「葵上」は上演頻度も高いので、様々な演出や型の工夫が試みられています。私もいろんな「葵上」を見てきました。

でもたぶん、オリジナルが一番しっくりくるように思います。

今回は、あえてあまり工夫を凝らさず、シンプルに演じてみました。「シンプル イズ ベスト」とはよく言ったものです。「葵上」は台本がよく出来ているので、台本の力が良い舞台にもっていってくれます。

 

改めて、「葵上」ってよく出来た能だなあと感心しました。より一層と「葵上」が好きになりました。

 

思う存分「葵上」を演じることが出来ました。

さあ、明日から入院です。

 



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2022年05月24日

深川能舞台チャンネル 「葵上」の見どころ紹介

来月に開催する自主公演「桑田貴志 能まつり」で上演する能「葵上」の見どころ紹介の動画を、YouTubeにアップしました。

一年ぶりの動画編集です。やり方をすっかり忘れてしまい、また一から勉強し直しました。

相変わらずカメラに向かって一人で話すのは緊張します。
去年はガチガチの顔で説明していましたが、今年は少し表情が柔らかくなっております。

舞台で使用する能面や能装束などもご覧いただけます。

チラシには「5月中旬頃配信開始」となっておりますが、少し遅くなってしまいました。

ご視聴は無料です。お暇な折に覗いていただければ幸いです。




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2022年05月15日

老舗蕎麦屋 115年目の変身

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近所にある老舗の蕎麦屋さん。明治40年に店をかまえて創業115年だそうです。

ちょっと前、ネットニュースの見出しで
「老舗蕎麦屋、うどん屋に転身」

という記事を見つけました。
その時は気にもしませんでした。

数日前、再びその記事を見つけました。
今度は地域ニュースだったので、「ふうん、どこだろう」

と何となくクリックしたら、なんと近所の贔屓の蕎麦屋でした。

ご主人のご家族に蕎麦アレルギーの人がいるので、家族の健康のためにうどん屋へと転身するそうです。

このお店で蕎麦が食べられるのは5月15日までだそうです。

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「これは、行かなければ」と、昨日家族で行ってきました。

以前はよく行っていたのですが、コロナ禍以降は一度も行っておりません。
そもそもコロナ禍になって以来、ほとんど外食していません。

店はそのニュースを聞きつけたお馴染みさんで、大行列でした。

1時間45分も待って、やっと入店できました。

相変わらず、美味しい蕎麦を堪能しました。

この辺りは、以前は木場の材木屋がズラリと並んでいた場所です。
この蕎麦屋は、材木屋の職人さんがサッと来てガッツリ食べれるように、盛りが多いのが特徴です。

食べ盛りの子供と食べ盛りの大人(私のこと)を抱える我が家は、このボリュームが大変ありがたかった。

来週から、うどん屋となります。
どんな味になるか楽しみです。


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2022年05月14日

桑田貴志 能まつり「葵上」

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自身の芸の研鑚のため立ち上げた「桑田貴志 能まつり」。今回は、「葵上 梓之出・空之祈」に挑戦します。
会場は今年も、観世能楽堂です。日本の舞台芸術文化が集まる銀座に出来た能楽の殿堂として、内外にその魅力を発信するこの能楽堂で開催できることを嬉しく思います。

 

「葵上」は、能の中でも一二を争う人気曲です。上演回数もトップクラスに多いのですが、私は今まで縁がなく、15年前の初演以来、一度も演じておりません。好きな能ですので、いつかは再演したいと考えておりました。

 
この能の人気の秘密は、いろいろあります。

l  前場も後場もテンポよく舞台は進行し、劇的な展開を見せること。

l  「源氏物語」の中でも一番インパクトのあるヒロイン・六条御息所が、主人公の能であること。

l  元皇太子妃であり、美貌と気品と知性を兼ね備える六条御息所が、嫉妬に狂い般若の能面をつけて鬼女となって大暴れするというギャップ。

l  「源氏物語」の世界から抜け出たような華やかな装束と、美しい詞章で平安貴族の世界を存分に味わえること。

l  六条御息所の恋敵である葵上をあえて登場させないという演出。葵上は、舞台正面先に小袖を置くことで表現する。これは六条御息所の苦悩にスポットを当て、葵上を襲うシーンの生々しさを抑えるという秀逸な演出。

などなど、挙げるとキリがないほどです。

今回は、「梓之出」「空之祈」と、二つ小書(特殊演出)をつけて挑戦致します。

「梓之出」は、前シテが、いかにもツレの照日の巫女の呪力によっておびき出されるかの如く登場します。前半の長い謡がカットされスッキリとした構成になります。

「空之祈」は、後シテの装束がチラシの写真の通り華やかになります。宮廷貴族を思わせる美しい赤色の長袴を着ながら、激しい動きを見せるところが鮮やかです。途中でワキを幻惑させ、ワキがシテを見失う所作を見せるなど、劇的な舞台展開を見せます。



仕舞は、観世喜正師の「源氏供養」と観世喜之師の「野宮」です。どちらも「源氏物語」題材をとった美しい舞です。「野宮」は六条御息所が優美で静かな舞を見せます。「葵上」の激しさとは違う側面が見どころです。

 


狂言は、TVや映画など多方面で活躍されている人気狂言師・野村萬斎師にお願いしました。

「蚊相撲」は、蚊の精と相撲を取るという奇想天外な狂言です。萬斎師の華麗で洒脱な芸を、お楽しみ下さい。


冒頭に、鑑賞の手引きといたしまして「源氏物語と能」と題して林望先生に解説をしていただきます。林望先生は、若いころから能のお稽古をなさるなど能に大変造詣が深く、また「謹訳源氏物語」(毎日出版文化賞特別賞)など、「源氏物語」関係の著作も多く出されています。興味深いお話となることでしょう。



日本文化研究の世界的権威であり、文化勲章受章者の故ドナルド・キーン氏は、東日本大震災の後に日本国籍を取得されました。その理由は、「日本には『源氏物語』と『能』があるから」だそうです。
ドナルド・キーンが愛した「源氏物語」と「能」を、ご堪能いただければ幸いに存じます。

 


チケットは、私の公式ホームページの申込みフォームまたはメールからお申込みください。
お電話でのお申込みは、矢来能楽堂のみにて受け付けます。お待ちしております。


WEB予約 http://fukagawanohbutai.sakura.ne.jp/
E-mail    shitashimu@hotmail.com

TEL予約 03-3268-7311(矢来能楽堂)




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2022年04月10日

「須磨源氏」御礼

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4月10日(日)、九皐会「須磨源氏」無事に終わりました。ご来場の皆さま、ありがとうございました。

長く楽しむことが出来たソメイヨシノも、さすがにほとんど散ってしまっていましたが、舞台の上には満開の桜を咲かせようと、張り切って演じました。

「須磨源氏」のシテは、光源氏です。
光源氏と言えば、「源氏物語」で数々の女性と浮名を流すイケメンですが、この能には女性は全く出てきません。
ひたすら、光源氏のイケメンぶりを楽しむ能の作りとなっています。

舞台の上とはいえ、絶世の美男子を演じるのは気分の良いものです。
光源氏らしく、颯爽と舞を舞い、楽しく演じられました。

能装束も、華やかなものを選びました。

前シテの老人も、若々しい配色の装束を取り合わせました。
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声の調子も少し高くとって、華やかな老人となるように工夫しました。
そうは言っても、あまり声を張りすぎると若者の謡になってしまうので、声は抑えながら張って謡いました。
声の出し方の塩梅って、能の謡で一番難しいと思います。

老人の役柄はたくさんありますが、能によってその声の出し方は全く異なります。
例えば、2月に演じた能「項羽」の前シテの老人は、実は中国の猛将・項羽の亡霊ですので、抑えた声の調子の中に、武将らしい強さを込めなければなりません。
「須磨源氏」は、老人だけど華やかさを内包させて謡うとい難事を求められます。

だから謡というものは、難しいし、面白いのだと思います。

前場は、丁寧に演じました。まあ滞りなく出来ました。
ここで気を抜かず、後場へ突入です。

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後シテは、ことさら華やかな能装束を選びました。

謡の中に「青にびの狩衣 たおやかに召されて」とあるので、上着の狩衣は、品の良い青色を選びました。

袴は、紫色の指貫です。これは、上着の青色との相性と、紫式部からの連想です。

そして、内側には赤色の厚板を着ました。厚板は普通に構えると全く見えないのですが、上の写真のように狩衣の袖を翻したりすると、脇からチラッと見えます。この「チラ見せ」が、日本の美意識と言われます。

師匠にも、「光源氏らしく優雅に華やかに演じなさい」と何度も注意をされました。
より優雅に、より華やかに見えるよう、工夫して演じました。

眼目の「早舞」は、通常は三段構成の舞のところを五段で、しかも替之型でさせてもらいました。

これは、もう一番の能「采女」と舞が重なっているためです。
「須磨源氏」の「早舞」と「采女」の「序之舞」は、舞の動きがほぼ一緒です。こういう場合は、「早舞」の方を替之型で舞うことになっています。

替之型は、普通の早舞より動きや回転や多くなり、より華やかな舞になります。
せっかく替之型で舞うことが出来るので、のびやかに楽しんで舞いました。

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能が終わった後、いつもはイロイロ反省するのですが、今回はおおむね満足できた舞台となりました。
こんなことは珍しいです。


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2022年03月21日

九皐会「須磨源氏」

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来る4月10日(日)に、観世九皐会にて能「須磨源氏」を演じます。

この能は、「源氏物語」に題材をとっています。
舞台は、須磨です。そう、「源氏物語」の「須磨」の巻が典拠になっています。

「源氏物語」に題材をとった能は、「葵上」「夕顔」「玉鬘」「浮舟」「源氏供養」等、たくさんあります。
この能は、その中で光源氏をシテとする唯一の能です。

そして、他の源氏物の能では、光源氏と浮名を流した女性が登場しますが、この能には女性は全く出てきません。(「源氏供養」だけは、作者の紫式部をシテとする点で異質ですが)

この能には、男女の恋の話や情事などは全く出てきません。光源氏が「須磨」の巻で植えたとの記述がある桜の木が重要な役割となります。

前場は、光源氏の化身である老人が登場し、その桜を愛でて、光源氏の生涯を詳しく語ります。
後場は、光源氏が美しく登場し、華やかに舞を舞う趣向の能です。

能の中で扱われる「源氏物語」では、光源氏との純粋な恋物語や、悲しい恋愛、または激しい嫉妬などが、ひたすら女目線で描かれますが、この能にはそういった「恋バナ」は全く出てきません。

前場では、光源氏ゆかりの美しい桜と、光源氏の華麗なる生涯が語られ、後場はただひたすら光源氏の美しさを愛でられます。

徹底的に、「絶世の美男子・光源氏」を持ち上げる能です。


「源氏物語」は、映像化のたいへんに難しい物語と言われます。
というのも、光源氏を演じる役者がいないからです。

物語の中で、ことあるごとに「玉のような美しさ」とか「目を見張るような華やかさ」などと言われ続ける光源氏を、いったいどの役者が演じられるでしょうか。これは難しい問題です。
だから、「源氏物語」の評価の高さとは裏腹に、ドラマ化や映画化は極端に少ないそうです。

能という演劇は便利なものです。
能面で顔を隠すので、この私でも光源氏を演じることが出来ます。
きれいな顔立ちの能面をつけ、豪華な能装束を身にまとえば、能舞台で光源氏になることが出来ます。

日本史史上、最高のイケメンである光源氏をどう演じるか。
こうご期待ください。


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2022年02月28日

「項羽」御礼

若竹能「項羽」、終わりました。
いつものように演能レポートをまとめます。
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今回は、新型コロナウイルス・オミクロン株の大流行の中での開催です。
何はともあれ、無事に若竹能が開催されホッとしました。
まん延防止等重点措置の期間中にも関わらず、多くのお客様にご来場いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

今回の若竹能のテーマは「異国探訪」
中世の日本人にとって異国とは、即ち中国のことでした。

北京五輪が終わった直後のタイミングで、中国物シリーズの上演です。いかにも、時期を合わせた企画に見えますが、まったくの偶然です。

そもそも、この「異国探訪」の企画をまとめたのは2019年の暮でした。
もともとは2021年の若竹能の企画でしたが、コロナ禍により一年延期になり、ちょうど北京五輪の時期に重なりました。

北京五輪を見ていて思うのは、中国人の色彩感覚の鮮やかさです。
開会式や閉会式でも、色彩豊かな演出が目につきます。

だいたいにおいて中国人は、赤色を好むようです。
昔、シンガポールで中国人にどうして赤色のものばかり身に着けるのか聞いたら、赤は「魔よけの色」ということで冠婚葬祭などで好んで着るそうです。

中国の国旗は赤色ということもあり、団体競技のユニフォームはだいたい赤色ですし、個人競技でも圧倒的に赤色のウェアを着ています。

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男子フィギュアスケート金メダルのネイサン・チェンは中国系アメリカ人なのに、衣装は鮮やかな赤色でした。これは、中国人のDNAに組み込まれている色彩感覚なのでしょう。

そんな訳で、今回は赤を基調とした装束の取り合わせをしてみました。

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向かって左がシテの項羽、右が項羽の后の虞美人です。
いかにも中国風の取り合わせです。

項羽が着ている上着は、赤地の法被です。これはとても珍しい配色の装束です。赤地の法被を持っている能の家は少ないようです。大変に珍しがられます。
しかし、この赤地法被は鮮やかすぎて、なかなか実際の舞台では使われません。

ネイサン・チェンのフィギュア・スケートを見ていた時、ふとヒラメキました。
「あの赤地法被、項羽にピッタリじゃないか」
よいヒラメキでした。

今回はとにかく派手な装束を取り合わせました。
赤地の上着の下には、黄色と青色の段模様の厚板を着ました。
何とも派手ですが、何となく成り立つのが能装束のすごさです。

洋服で例えると、黄色と青色の縞のシャツの上に赤色のジャケットを着ているようなものです。
ちょっと考えられないような取り合わせですが、能装束ではそれなりになっているのが面白いところです。

前シテの老人も、派手な装束を選びました。

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普通は、老人は無地熨斗目とか小格子厚板のような地味な装束を着ます。
今回は、ご覧の通り飛雲模様の派手な厚板を着ました。

もう一番の能の「東方朔」と老人の役が重なるので、頭も淵明頭巾(えんめいずきん)という変わった被り物をしました。


ワキが持つ花の挟み草は、今回新たに制作しました。
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矢来能楽堂にある挟み草は、春の花で飾られています。
それもそのはず、この挟み草は「雲雀山」という春の季節の能のために作られたものだからです。
「項羽」は秋の曲なので、季節感を大事にするため、新たに制作することにしました。

浅草橋の造花屋さんにいって、コスモスや桔梗、ポピーなど秋の花を大量に買い込んで、自作しました。
内弟子修業は、よくこうやって小道具を作ったなあと、懐かしく思いながら、花盛りの挟み草を作りました。これでもかというくらい花を盛り込んで、たいそう華やかな挟み草を作りました。
能楽師って、大道具や小道具も自分たちで作らなければなりません。手先が器用じゃないとできない商売です。

能面は、観世喜之家のお宝面の一つ「東江(とごう)」です。
22.02.27 若竹能 (262)

少々、怖い面相をしているので、用途が限られる能面です。
日本人離れした顔立ちが、いかにも「項羽」にピッタリと思い、師匠にお願いして使用させていただきました。

コワモテでありながらどこか愁いを帯びた表情が、良い効果を生んでいたと思います。

このように今回は、装束や能面、小道具にこだわりました。
こういった工夫が、シテが自ら出来るのも能の良さだと思います。


さて、肝心の舞台ですが、少々悔いの残るものとなってしまいました。

前場はうまく出来ました。

老人の出で立ちですが、実は中国の豪傑・項羽の化身です。とにかく強く演じることを心掛けました。
前場の見せ場の「語り」では、老体を意識しつつも、内面から項羽の強さを爆発させて謡いました。
所作も大振りに演じてみました。
22.02.27 若竹能 (204)

良い手ごたえで前場を終え、いよいよ後場です。

後シテ項羽は、矛(ほこ)という中国風の武器を持ちます。矛は他には「逆矛」にしか用いない珍しい持ち物です。
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この矛を振り回しながら縦横無尽に動き回り、
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一畳台に飛び乗り飛び降り、大立ち回りを見せます。
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身を投げた虞美人を矛で探す型は、この能にしかない特殊なものです。
今回はよりリアルに写実的に演じてみました。効果的に演じられたように思います。
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この辺までは順調でした。そこで油断したわけではないのですが、その後落とし穴がありました。

この、虞美人を捜す段落「舞働」が終わった後、台に飛び乗り矛を突いたとき、矛が台から外れてしまいました。
ほんの少しのことなのですが、能面を付けていると視界が狭いので、矛がどうなっているのか自分では分かりません。
感触的に、どうやら台の上で突くはずだった矛を、台の下に突いているようです。
そんなことを考えていたら、シテ謡を謡うタイミングを失敗してしまいました。

シテ謡なのに、何故か地謡と勘違いしてしまい、謡に変な間が出来てしまいました。
「あちゃ~ やっちまった」
こう思ったが運の尽き、その後の型を2~3ミスしました。

ミス自体は細かいものでしたが、続けて起こったことは、大きなショックでした。

一つの失敗から、失敗が連鎖することはよくあります。人間、失敗すれば誰しも動揺します。
しかしプロの能役者として、それは避けなければなりません。

だいたい、舞台で調子のよい時ほど落とし穴があるものです。
舞台の怖さを改めて思い知らされました。


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2022年02月13日

若竹能「項羽」

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来る2月27日(日)に、若竹能にて能「項羽」を演じます。


若竹能とは、九皐会の若手で構成される会です。毎回テーマを決めて、メンバーで取り組みます。
今年のテーマは、「異国探訪」です。

能が大成した室町時代、日本人にとって異国とは、中国のことでした。
ヨーロッパやアメリカなどは存在すら知りませんでした。

海を渡った向こう側には、中国という進んだ国があるらしい。そして、中国のさらにずっと奥の奥に天竺という仏教が生まれた神秘的な国があるらしい。

これが、室町時代の日本人の異国観です。

室町時代の日本人で中国に行ったことある人は、ごく少数でした。ほぼすべての人にとって、想像の世界です。きっと、今の私たちが宇宙に行くようなものであったことでしょう。

能には、中国を舞台とした能がたくさんあります。現行曲200曲のうち、24番は中国が舞台、または中国にちなんだ曲です。

中国物は、大きく分けて3つに分かれます。

まず、中国の有名な人物をシテにした能。「項羽」「楊貴妃」「白楽天」などがそうです。

そして、おとぎ話やファンタジー物。現代でもファンタジー映画などは、どこかの国が舞台となって空想の物語が展開します。
酒好きの妖精が出てくる「猩々」や、獅子の舞を見せる「石橋」、鶴と亀が皇帝の長寿を祝って舞を舞う「鶴亀」、不老不死の泉を飲んだ少年が楽しく舞う「菊慈童」など、ファンタジー物は数多くあります。

最後に、日本を舞台にすると具合が悪い物語です。例えば「天鼓」は、帝が少年の鼓を取り上げて殺害するという設定です。日本を舞台にすると、「天皇陛下がそんなことをするはずがない」と批判を受けてしまいます。だから、舞台を中国にしております。

そして、唯一中国以外の異国を舞台としている能が「一角仙人」です。
この能は、一番ぶっ飛んだ設定なので、ファンタジーを超えた世界として天竺を舞台にしています。


今回の若竹能は、こういった異国物を一気にまとめてみました。

私は、古代中国の大英雄・項羽の戦いを描いた能「項羽」を演じます。
中国では項羽は、大英雄だそうです。日本でいう源義経のような存在だそうです。

中国人に、「項羽」という能があるというと大変驚かれます。
考えてみれば、例えば「源義経」という京劇があったら日本人はたいそう驚くことでしょう。(京劇のレパートリーは知りませんが、日本を舞台としたお話は、おそらく無いと思います)

中国の大英雄を豪快に演じたいと思います。

もう一番は「東方朔」です。この能は、まさにファンタジー能です。
3000年に一度咲く桃の花が咲いたので、それを持って天女が現れます。そして天女と老体の神様がめでたく一緒に舞を舞うという楽しい内容の能です。

老体の神と若い女性がシンクロして舞う展開は、面白いです。


コロナ禍において、なかなか海外旅行に行けない昨今。
能楽堂の中で、つかの間の異国情緒を味わっていただきたいと思います。

チケットご希望の方は、ご連絡ください。

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2022年01月01日

謹賀新年 2022年

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

新しい年がやってきました。
去年と同じようにどこにも出かけない正月になりそうです。

ここで英気を養って、一年頑張っていきたいと思います。

今年は下記の能を演じる予定です。

2月27日 「項羽」        九皐会若竹能
4月10日 「須磨源氏」      九皐会
6月26日 「葵上 梓之出 空之祈」桑田貴志能まつり
10月9日 「班女」        九皐会
11月5日 「天鼓 弄鼓之舞」   緑泉会

今のところ5番の能に取り組みます。
それぞれを、一期一会の心持ちで演じたいと思います。

今年もよろしくお願いします。


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2021年12月31日

御礼 2021年

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今年も新型コロナウイルスに振り回されて大変な年でした。

幸い、去年延期になった自主公演「桑田貴志能まつり」は、何とか開催することが出来ました。
それは本当にうれしい出来事でした。

また、文化庁から

重要無形文化財「能楽」総合認定

を頂戴したことは、とても光栄なことです。
重要無形文化財に恥じぬよう、精進を重ねていきます。


しばらく、新型コロナウイルスとの戦いは続くと思います。
歯を食いしばって踏ん張っていこうと思います。

今年演じた能は、以下です。

5月15日 「山姥」  桑田貴志能まつり
6月10日 「小鍛冶」 文化庁学校巡回公演
7月11日 「賀茂」  九皐会
9月19日 「鵜飼」  緑泉会
12月6日 「土蜘蛛」 牛込地区小学校学生能
12月20日 「松風」 若竹会(稽古能)

有料の玄人会の公演では「山姥」「賀茂」「鵜飼」と3番でした。
そして、今まで演じてきた能は、通算139番となりました。

どれも思い出深い能です。
コロナ禍において、6番もの能を演じることが出来たことは、前向きに喜びたいと思います。

来年もよろしくお願いいたします。


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2021年10月20日

東京にいながら、シンガポールまたはインド

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先週、私が能の指導に行っておりますシンガポールの演劇学校(Intercultural Theatre Institute)で、演劇公演がありました。

この学校は、1年生と2年生は様々な基礎トレーニングの授業を受け、3年生は演劇公演を中心に実践的なトレーニングを行うカリキュラムを組んでいます。

その基礎トレーニングの目玉としてアジアの古典演劇を学びます。
必修科目は、日本の能、中国の京劇、インドのクーリヤッタム、インドネシアのワーヤン・オンです。
私は、その能の稽古の講師をしております。

昨年に引き続き、オンラインでの卒業公演でしたので、日本にいながらリアルタイムで鑑賞できました。

新型コロナウイルスの影響は、シンガポールの演劇界でも大変なもののようです。
この演劇学校においても、授業や公演などで大きな制限があります。

私も、本来は今年の春に能の指導に行く予定でしたが、とてもシンガポールへ渡航できる状況ではありませんでした。
能の授業は、結局延期されました。

こういった難しい時節の中、演劇に取り組み、卒業公演を迎えた学生たちの苦労は大変なものであったことでしょう。

本当はお客様の前で、演じたかったはずなのですが、無観客のオンライン開催となってしまった彼らの胸中は、察するに余りあります。

しかし、本来はシンガポールにいなければ見ることができない彼らの卒業公演を、日本で鑑賞できるのは、私にとってはうれしいことです。

今の3年生は、2年前に能を教えた学生たちです。
2年たつと、だいぶん風貌も雰囲気も変わってきます。

2年前は入学したばかりの新入生だった彼らは、能の稽古でもぎこちなく、オドオドしたところなども見受けられました。

そんな彼らの堂々としたパフォーマンスに、圧倒されました。立派な演技でした。
それぞれが、20分ほどの短いパフォーマンスを演じていました。
歌あり、ダンスあり、語りありと、それぞれの学生たちの個性が見て取れました。

彼らの2年間の鍛錬の様子がうかがえます。

コロナ禍において、いろいろな苦労を強いられたことでしょう。
そんな中で、このような公演を作り上げた彼らの頑張りを思い、目頭が熱くなりました。

そこには、2年前に能の謡や仕舞にオロオロしていた彼らの姿はありません。
ひとかどの役者として、素晴らしいパフォーマンスを演じていました。

嬉しいひと時でした。


その後、今度は去年の卒業生から連絡が来ました。
その卒業生は、インドの古典芸能であるクーリヤッタムの役者として活躍しています。

クーリヤッタムとは、世界でも最も古い演劇の一つであり、2001年にユネスコから世界無形文化遺産の第一回の指定に、能と共に選ばれました。
この第一回の指定の時は、ユネスコ加盟国200か国ほどの中から17の文化遺産が選ばれました。その中に能もクーリヤッタムも入っています。
私は、クーリヤッタムの日本公演を見たことありますが、能とよく似た演劇で、その迫力に圧倒されたことをよく覚えています。

そんな彼から、クーリヤッタムのオンライン配信があるから見てくださいとのメッセージが届きました。

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久しぶりに見るクーリヤッタム。
卒業生の彼の、華麗なる演技に圧倒されました。

彼は、クーリヤッタムの役者でありながら、シンガポールの演劇学校に入学しました。
そこで彼は、多くのことを学んだことでしょう。

私が能を教えた時も、さすがに現役のクーリヤッタムの役者だけあって、体の切れは抜群でした。

そんな彼が、インドに帰国して、クーリヤッタムの舞台に出演しています。
きっと、シンガポールの演劇学校で学んだことが、おおいに生かされているパフォーマンスであったに違いありません。

パソコンの画面にくぎ付けでした。


今回、シンガポールの演劇学校の卒業公演、インドのクーリヤッタム公演と、続けて観る機会を得ました。

自宅で、シンガポールとインドのパフォーマンスをリアルタイムで鑑賞することが出来るなんて、便利な世の中になったものです。



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2021年09月25日

深川江戸資料館「秋の能楽初め」

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毎年恒例の深川江戸資料館にての「能楽初め」
今回で7回目の開催となりました。

例年は正月に行っておりましたが、今年度はこの深川江戸資料館が11月から耐震工事に入るので、「秋の能楽初め」と題して、秋開催といたしました。
上の写真は、何年か前のものです。

コロナ禍の中、お客様がどれほどお運びいただけるか心配しましたが、杞憂でした。
立ち見も出るほどの大盛況でした。
ご来場の皆様、ありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。


前回は、コロナ禍を鑑みて謡はほとんど謡わずに舞を中心にしましたが、今回は資料館が透明なパーテーションを用意してくださいましたので、飛沫感染も最小限に抑えられることから、謡も存分に紹介しました。

今回は「能の五番立て」をテーマにして、能の五つのジャンル「神・男・女・狂・鬼」のジャンル分けの説明と、それぞれの代表曲「高砂」「屋島」「羽衣」「桜川」「殺生石」の仕舞を舞いました。

地元・深川での能の発信イベントとして、大事にしていきたいと思います。


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2021年09月19日

「鵜飼」御礼

台風一過のシルバーウィーク。
緑泉会にて能「鵜飼」を演じました。ご来場の皆様、ありがとうございました。


前日は、高知で「羽衣」の地謡と「安宅」のツレ山伏を勤めて疲労困憊でしたが、今日は朝起きると元気一杯です。

やはり、シテの日はアドレナリンが出るのでしょうか。まったく疲れも感じませんでしたが、大事をとって午前中は身体を休め、いつもより遅く楽屋入りしました。


「鵜飼」は、前シテが独特な能です。
卑しい身分の老人という、能にしては珍しい役柄です。難しい表現になります。

あまり立派に演じるわけにはいきませんが、かといってショボクレた老人になっては能になりません。
前シテは謡が多いので、気を使いました。

あまり、直接的に力が現れないように、身体内に力を込めて演じました。
「何だかただ者ではない老人の存在感」を出そうと工夫しました。

そんな普通ではない力加減で演じていたので、前場はいつも以上に疲れました。
力を外に発散して直接的に演じる方が、やはりやり易いですね。

前場の見どころは、生前の鵜を使って魚を取りまくる場面を再現する「鵜之段」と呼ばれる場面です。
ここは、前場の最後の場面です。
それまで終始、力を内に込めて抑えた演技をしていましたが、ここで蓄えたエネルギーを一気に放出しました。
一心不乱に魚を捕る様を、少々強めに演じました。

これは、ある兄弟子の舞台を参考にしました。
その兄弟子は、たいそう釣り好きで、ちょくちょく釣りに出かけています。

その兄弟子が「鵜飼」を演じた時、「鵜之段」がすごい迫力だったので、他の兄弟子が「老人の舞だから、もう少し抑えた方が良いのでは」とアドバイスをしていました。

するとその兄弟子は涼しい顔をして言いました。
「何言っているんだ、釣り場では老人の方がよっぽど元気だぞ。みんなすごい勢いで、生き生きとして魚をとってるものだよ。」

なるほど、実体験に元づいた演技には説得力があります。
私もその兄弟子のように、勢いよく、生き生きと魚を捕る様を演じました。


さて後場ですが、後シテは閻魔大王という分かりやすい役柄です。
大ぶりにドッシリと演じました。

こういう役柄は、力を外に発散できますのでやり易いものです。
あらん限りの力をぶつけて謡い、舞いました。

飛び安座という、能の中でも最も派手な大技(飛び上がって、空中で安座の姿勢を作ってそのまま舞台へ着地するという危険な型)も、キッチリ決まりました。


50歳となって初めて演じた能でした。
前に書きましたが、50代は能楽師として全盛期です。

生涯で一番良い能を、常に演じていきたいと思います。
そして、毎回の生涯一番の能を更新していきたいと思っています。


ところで、我が家の近くには法乗院(深川えんま堂)というお寺があります。
そこには高さ3.5m、幅4.5mという日本一の大きさを誇る閻魔大王座像があります。
今回、「鵜飼」を演じるにあたって、神妙にお参りいたしました。

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ごらんの通り、すごい迫力です。
この閻魔大王の迫力を胸に焼き付けて、今回の舞台は演じました。


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2021年09月17日

台風の中、高知へ

今週は、本来は広島→倉敷→岡山→松江→高知というハードなツアーの予定でした。

しかし、緊急事態宣言を受けて行われる公演は月曜日の広島と土曜日の高知公演のみです。

当初の予定では、今日は松江から高知へ移動する日でした。
松江と高知は、近いようでとても行き難い場所です。結局、松江→東京→高知と飛行機で移動するのが1番楽でした。

元々の予定では、松江から羽田空港へ戻り最終の高知行きの飛行機に乗り換えて高知を目指す予定でした。
しかし松江公演がなくなってしまったので、今日は飛行機を午前の便に振り替えて、早めに高知入りすることにしました。

結果的に大正解でした。

羽田空港に行ってビックリ午後の便は台風で全て欠航。
運行しているのは私が予約している便だけでした。
その便も、高知空港に着陸できない時は羽田空港に引き返すという条件付きです。

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以前、高知公演の折に高知空港上空まで来たのに、視界が悪くて着陸できずに羽田空港に引き返したことがあります。
その時のことを思い出しました。

台風のため、飛行機はすごい揺れです。今までずいぶん飛行機に乗りましたが、その中でも最大級の揺れです。

なんやかんやと高知空港上空まで来ました。
以前引き返した時も、ここまでは順調でした。

その後、上空を旋回しながら着陸を2回試みましたが、視界不良で着陸出来ずに、結局羽田空港に引き返したのです。

着陸体制に入った時、祈りました。

「頼みます。ここで引き返したら、もう今日中に高知へ行くことは出来ない。何とかして、滑走路に降りてくれ」

祈りが通じたのか、首尾良く着陸出来ました。

ただいま、高知でのんびりしています。

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さあ、明日は高知県立美術館 能楽堂で「羽衣」と「安宅」です。
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2021年09月13日

広島 弾丸ツアー

9月12日の観世九皐会定例会では、九皐会としては二度目の地頭を勤めました。

何度も書いていますが、地頭は地謡のリーダーとして能の中でもシテに匹敵する重要な役です。
地頭を勤めるときは、シテを演じるよりずっと緊張します。

去年に続いて二度目の地頭です。去年よりは余裕を持って出来たかなあと思います。

さて、この日は長い1日です。
九皐会が終わると、来週高知で演じるより「安宅」 の申合です。終わるともう18時過ぎでした。

そこから猛ダッシュで東京駅に向かいます。
19時の新幹線に乗って広島を目指します。
広島のホテルに着いたのは日付が変わる頃でした。

明けて月曜日は朝7時30分集合です。
広島市内の小学校で文化庁巡回公演でした。

本来はこの一週間で広島、倉敷、岡山、松江と回って土曜日の高知公演に移動する予定でしたが、緊急事態宣言を受けて、倉敷、岡山、松江の公演は延期になりました。


1校だけ行った巡回公演が終わったのはお昼前。お好み焼きを食べて家へ帰りました。 
帰宅したのは18時前。 

昨日東京を出発してまだ23時間しか経っておりません。
はあ、疲れた。

日曜月曜と濃密な時間を過ごしました。 

帰りの飛行機から眺めた富士山がキレイだったので写真を撮りました。

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2021年09月10日

緑泉会「鵜飼」ご案内

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919日(日)緑泉会にて能「鵜飼」を演じます。

 
新型コロナウイルスの収束は未だ見通せず、出口の見えない生活にやきもきする毎日です。

コロナと共に生きていかなければならない日々の中、今までとは違う行動様式が求められます。そんな時節だからこそ「今まで苦労して手にしたもの・身に付けたものを簡単に捨てたくはない」という思いは、誰の胸にもあることと思います。

能楽公演は、ありがたいことに半数の定員にての開催が認められております。能を演じられる喜びをかみしめつつ、今回の公演に誠心誠意取り組みたいと思います。

 

今回演じる「鵜飼」は、少々変わった能です。

鵜飼とは、鵜という鳥を使って魚を捕る日本の伝統的な漁法で、現在は岐阜県の長良川などで行われているものが有名です。前半のシテは、その鵜飼を行う老人ですが、この老人は毎夜のように禁漁地で鵜飼を行ったため、殺されてしまいます。
一般的に能に出てくる老人は、「実は神様でした」とか「実は源義経でした」などと、有名な人物や神様や草花の精などの化身として登場します。必然的に能の老人はどこか超次元性をもって演じられます。

 
「鵜飼」に出てくる老人は本当の老人、しかも密漁がバレて殺されてしまうという情けない老人です。このように卑しい身分の老人を描いた能は、「鵜飼」「阿漕」「善知鳥」と三曲しかなく、三卑賎物と呼ばれます。

能という芸能は、どんなに卑賎な者にも美しさを求めます。卑しい漁師であってもその中に日本人の持つ美意識を体現しなければなりません。
美しい女性や貴公子を美しく演じるのはやり易いですが、卑賎物の中に美を醸し出すのは、難しい演技となります。



この老人は、「阿漕」「善知鳥」と違って後半に罪を許されます。その罪を許すのが、後半のシテである閻魔大王です。
閻魔大王は言うまでもなく、地獄の番人として死者を極楽へ送るか地獄へ落とすか決める者です。一般的には大柄で力強い存在として知られます。


後半、閻魔大王が法華経の利益を説教し豪快に舞を舞います。私は割に体格が大きいので、身体を活かして大振りに力強く演じたいと思います。

 


ワキは、安房の清澄から出て身延山がある甲斐の国に赴くところから、日蓮上人であるといわれます。結果的に日蓮上人の弔いでもって罪人が救われるところから、このワキは大変重要な役どころです。


今年は折しも、日蓮上人生誕800年ということで日蓮宗では様々なイベントが行われます。日蓮上人にも思いをはせながら、この能に取り組みたいと思います。

 




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